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先着順でUPさせていただきます。
本日の小説記念すべき第1弾は、メタカビ。
せっかくなので、初のゲーム版で書かせていただきました。
カビのキャラが「こんなの自分のカービィじゃない!!」とか思っても文句言わないでください。
一応、受け入れやすいように素直で無邪気で純粋な優しい子を目指しました。
時間軸としては、USDXの「メタナイトでGO」の辺りです。
マルクがいる点については目をつむってください。
(マルク好きなんです)
リクエストくださった方、ありがとうございます。
よろしければお受け取りくださいませ。
『Link of the Milky Way』
(天の川の架け橋)
もうすぐ七夕の日。
一年に一回お願い事をお星様に叶えてもらう大事な日。
プププランドでは七夕のお祭りの準備に大わらわだった。
「ん~と、え~と・・・」
カービィはずっと鉛筆を手にお願い事に頭を振り絞っていた。
お願いは一人一個だけ、それ以上したらお星様は叶えてあげられなくなってしまうから駄目だとプププランドではそう言い伝えられている。
カービィはたったひとつのお願い事を何にするかで悩んでいる。
「カービィ、そろそろお願い事の短冊を笹に付けるのサ。・・・まだ、決まってないの?」
「だって、いっぱいあって迷うんだもん」
カービィのピンク色した短冊を覗き込んだマルクは呆れたように声をあげる。
何も文字らしきものすら書かれていない、まっさらの状態だった。
マルクは完成した自分の短冊をひらひらとカービィの目の前で振る。
「深刻に考えることでもないのサ。こんなの叶ってなんぼのものなのサ。どうしても叶えたいお願い事は大彗星のノヴァにお願いすれば良いだけの話サ」
「でも、ノヴァにお願いするのは大変だもん。それにノヴァにどうしても叶えて欲しいって訳じゃないし・・・」
ご飯たくさん食べたいとか、今まで見たことない食べ物食べたいとか、今年は毛虫でませんようにとか、等々カービィの無邪気なお願い事が次々と出てくる。
そのお願い事の中に自分が入っていないことにマルクは面白くなさそうにむっと表情をしかめさせた。
「あ、あとね!久しぶりにリボンちゃんにも会いたいし、それから今修行の旅に行ってるメタにも会いたいな!!」
カチン
カービィの最後の一言にマルクは機嫌を損ねた。
ふと何か思いついたのかニヤリといたずらっ子な歯を覗かせて笑う。
そして、希望で目を輝かせているカービィに辛辣に言い放った。
「どーせ考えたって無駄なのサ。メタナイトにはあえっこないサ!!」
マルクの一言にカービィはショックを受けた顔をしてマルクを振り返る。
どうして?と沈みかけたカービィの声音を気にするでもなくマルクは続ける。
「七夕って言うのはそもそも引き離されたお姫様と恋人が年に一回会えるから、嬉しくてみんなのお願い叶えてくれるのサ。でも、2人の間には大きな『天の川』って川があって、雨が降ると水が増えてお姫様は恋人に会いに行けなくなっちゃうのサ。だから、雨が降ったらお願い事もみんなパーなのサ!!まっ、しょうがないでしょーよ!!」
毎年七夕は殆ど雨だし、と締めくくったマルクはキャッキャと笑いながら去っていく。
その去り際にカービィの大きな泣き声を聞きながら・・・。
七夕の日はマルクの言ったとおり、黒い黒に覆われてとても星空なんか見られそうにない今にも降り出しそうな空模様だった。
カービィはお家の中から空の様子を心配そうに伺う。
(雨、降ってないかな?雨、降ったらお願い事叶わなくなっちゃうよ・・・)
結局、あの時考えつかなくて笹に付けられなかった短冊は自分の部屋の小さな笹の枝にくくりつけてある。
カービィはそのお願い事をもう一度読み返してため息を付いた。
(叶って欲しいな、このお願い事・・・)
カッ!!ゴロゴロゴロ!!
「うわあっ!!」
雷が鳴って凄まじい轟音が響き渡る。
カービィは思わず枕の下に潜り込んだ。
しばらく、雷が聞こえなくなるまで枕の下でじっとしていたカービィだが、いつの間にかそのまま眠ってしまっていた。
カービィは星空の中にいた。
うんと大きくて明るい星の上にカービィは立っていて、すぐ側には白っぽく見える小さな星の川が流れていた。
カービィは川の水をすくってぱしゃぱしゃかけて遊んでみたりした。
すると、そんなカービィに微かに笑いかける声が聞こえる。
カービィが顔を上げると川の向こう岸にメタナイトがいて、カービィに優しく微笑んでくれていた。
「あっ!メタ!!」
喜んでメタナイトの元に駆け寄ろうと川を渡り始めたカービィだが、星の川は普通の川と違ってうまく前に進めない。
更に追い打ちを掛けるように雨が降って水かさがだんだん増えていく。
水深がカービィよりも深くなった川は流れが強くて、足を取られたカービィは星の川で溺れてもがいた。
「ぷはっ!め、めたぁ・・・」
「だから、雨になったら渡れなくなって会えないって言ったのサ!!」
その声にカービィは溺れながらも必死に声の主を捜す。
マルクとデデデが遠いところでその様子を見て笑っている。
デデデはいつもおなじみのハンマーを持って大きく振りかぶった。
「ワシがお前達を一年に一度といえども会わせてたまるかゾイ!!その川が増水すればお前達は二度と会うことはできんゾーイ!!」
「やめて!!デデデ大王!!」
カービィは溺れながらデデデに向かって声を張り上げるが、デデデは問答無用とばかりにハンマーを振り下ろす。
すると、星の川はまるで堰を切ったように濁流となってカービィを押し流してしまう。
メタナイトがだんだん遠くなっていく。
手を差し伸べてくれているのがわかるが、手が届かない。
(いやだ・・・、もうメタに会えなくなるなんて・・・、いやだよ・・・)
溺れるよりもそのことが何よりも苦しくて悲しくて、カービィは徐々に星の川の中へと沈んでいってしまった。
「う、ん・・・。めた、・・・たすけ、て・・・」
カービィは苦しそうに息をしながら眠っている。
悪い夢でも見ているのか、額は冷や汗でびっしょり濡れていた。
そっと汗ばんだカービィの額を優しい手が撫でるように汗を拭いた。
その優しい感触にカービィはのろのろと重い瞼を開く。
視界がぼんやりしてよく見えないが、掛けてくれる声はカービィにとって聞き慣れた声だった。
「カービィ・・・」
「め、た・・・?」
その声にカービィは目をこすりながら起き上がる。
何度か目をパチパチとさせると視界がはっきりしてきた。
そこにいたのは紛れもなくメタナイトだった。
ようやく目を覚ましたらしいカービィにメタナイトは薄く笑う。
「こんな時間に寝ていたのか。・・・元気にしていたか?」
「メタぁ!!」
起きるなり目に大粒の涙を溜めて飛びついてきたカービィにメタナイトは慌てた。
落ち着かせようと試みても、カービィは離れるのは嫌だとばかりにメタナイトにしっかりしがみついて離れない。
カービィは泣きわめきながらも喋るのをやめなかった。
「うわあああああああん!!怖かったよー、雨が降って二度と会えないかと思ってたー!!」
「雨?会えない?一体どういう事だ?」
「マルクが言ってたんだもん。雨降ったら夜空のお姫様は川を渡れなくなっちゃうって、そうしたらみんなのお願いは叶わないって。ボクも頑張ったけどとても水が増えた星の川、泳げなかったんだ。おまけにデデデ大王が会わせるわけにいかないって、水かさ増やしちゃうし!!」
「・・・落ち着け、カービィ。話をまとめさせてくれ」
もはや訳がわからなくなったメタナイトはカービィをなだめすかせて話をまとめた。
マルクから七夕神話を聞いたカービィは雨が降るのを憂慮していた。
更にそれに対して追い打ちを掛けるように見た夢。
おそらく、七夕神話に即してそれぞれ見合ったカービィの知っている人物がその神話の登場人物になぞらえて出てきたのだろう。さしずめ、デデデ大王は2人を監視する天帝と言ったところか。
ふと、顔を上げたメタナイトはカービィの部屋に飾ってあった短冊に目をとめた。
その短冊の願い事を見て微かに笑う。
そしてカービィの手を引いて外に連れ出した。
「どこ行くの?」
「お前に見せたいものがある」
そう言ってメタナイトは翼を広げると、カービィを抱きかかえて夜空へと飛び上がった。
外は霧雨が降っていたが、メタナイトはあっという間に速度を上げて雲を突き抜けて飛んでいく。
ものの数分もしないうちに分厚い雲を抜けた。
その先には、雲で遮られて地上では見えない満天の星が煌めいている。
その光景に思わずカービィも言葉をなくした。
「きれー・・・」
「ほら、こっちだ」
メタナイトが南の方角の空を指さした。
その先には白っぽい星の密集した川・『天の川』とそれを挟むようにして光り輝く織姫星と彦星。
そして、メタナイトが指したもう一つの星。
その星は天の川から少し離れた位置でまるで二つの星を見守るように光っている。
「あの星が見えるか?あれははくちょう座の恒星・デネブだ」
「でねぶ?」
「織姫星のベガ、彦星のアルタイル、はくちょう座のデネブの三つを結んで夏の第三角形と呼ばれている。雨で増水した天の川は確かに渡れない。だが、その間にいるデネブが2人の間を取り持つ。その星が、天の川の橋渡し役になるのだ」
だから、とメタナイトはカービィに向き直る。
その手をそっと頬に差しのばした。
「2人の恋人達は誰が引き裂こうと必ずや一緒になれる。その思いが強ければ、必ず助けは現れる。・・・だから、私はお前の元に帰ってこられた」
その言葉にカービィはぱっと表情を輝かせる。
そして、邪魔する雲もない星空を2人、いつまでも眺めていた。
『お星様もボク達も、ずっとずっと大好きな人と一緒にいられますように』
カービィの今年のお願い事は笹にひとつ、揺れていた。