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ゲームのちょっとした綴り書き。 気の向くままに更新します
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メタカビ26話パロ、久々に続編UPしました。


本当は前編と後編に分けるつもりだったんですけど、結構間が骨太になっちゃって後編にしても大き過ぎて重かったので、真ん中パートを独立させました。
つまり、本日は中編です。(うわー、焦らしだ)


待っててくださる皆様には本当に申し訳ないです。
その代わり後編はもう、最初から最後までクライマックス(元ネタわかる方だけ笑ってください)で行きますので・・・。



『I pass everything can save you part2』




カチ、カチ、カチ、カチ・・・。

その日はやけに時計の針の音が耳にまとわりついていた。
フームは時折冷たい水を絞ったタオルでカービィの額を拭う。
いつも元気な小さな戦士はぴくりとも動かなかった。
「カービィ・・・」
手に刺さった牙が痛々しい。
魔力がこもったその牙は何度も抜こうと試みたが、決して抜けることはなかった。
唯一の彼を救う手立ては・・・。

ボーン・・・

「っ!!」
時計の音にフームはびくりと身を引きつらせた。
現在午後四時を告げる音は残酷なほどその空間に響き渡った。
城に響き渡る時刻を告げる鐘の音も否応なくフームの耳に突き刺さる。

『そいつが死ぬのはもうすぐだ』

そう言われている気がしてフームは時計の音を聞かないように固く耳を塞いだ。
それでも、唯一の希望に賭けてカービィの手の牙からは目を離さなかった。

(お願い、早くあいつを倒してカービィを助けて・・・、メタナイト卿)






「待てっ!チリドッグ!!」
『!!』
城の隠し通路を走り回っていたチリドッグは振り下ろされた剣戟に忌々しげに牙を鳴らす。
紙一重でメタナイトの剣をかわすと、跳び下がって間合いを計った。
だが、メタナイトは反撃する暇も与えず斬りかかる。
過去にも戦った記憶があったが、メタナイトの持つ剣だけは他の剣とは違って深手の傷を負わされる、以前斬りつけられた右の後ろ足は古傷として残っていた。
こいつも仕留めるか、そう思ったチリドッグは獰猛な顎から牙を覗かせてメタナイトに飛びかかった。

「卿!!危ない!!」
「チリドッグめ!我らが相手だ!!」

他の通路から駆けつけてきたソードとブレイドの剣がチリドッグの爪をはじき飛ばす。
思わぬ邪魔に体制を崩したチリドッグの隙を逃さず、メタナイトを中心に三人は向かってきた。
『・・・ッ!!』
「!!危ない!!」
チリドッグの吐き出した光弾がその場で爆発した。
異変に気がついたメタナイトが止めなければ、ソードとブレイドも無事では済まない所だった。
爆風によって起こった煙が収まる頃、チリドッグの姿は通路のどこにも見あたらなかった。
「これは・・・」
「どうやら、逃げられたようです」
ソードとブレイドは通路の影などもつぶさに見渡したが隠れている様子はない。
勝ち目がないことを見抜いたチリドッグは既に安全な場所に逃げ込んでしまったようだった。
「・・・くそっ!!」

ギィン!!

剣が岩を噛む鋭い音にソードとブレイドは身を引きつらせて背後を振り返る。
通路の壁に打ち付けられたギャラクシアは壁に痛々しい傷跡を残していた。
だが、それ以上に仮面からかいま見えたメタナイトの眼光の鋭さは長年仕えていたソードとブレイドでも恐れを隠せないほどだった。
「きょ、卿・・・」
「どうかお鎮まりを・・・。奴はまた見つか・・・」
「奴が見つかるまでなど、悠長なことを言ってられるかっ!!」
今まで聞いたことがないほど荒げた主人の声にソードとブレイドも怯んで口をつぐんでしまう。
怯んだ部下の様子にさすがに言い過ぎたと感じたのか、メタナイトはギャラクシアの切っ先を下げてうつむいた。
「・・・すまない、私としたことが取り乱した」
「いえ、そんな・・・」
「こちらこそ、ご無礼を申しました」
多少落ち着きを取り戻したメタナイトにほっと胸をなで下ろしながら、その反面無理もないとソードとブレイドは思った。
チリドッグを今夜十二時以内に倒さない限り、カービィは永遠に目覚めることはない。
カービィを守り育てることだけにメタナイトは全てを賭けて、どんなことにも耐えてきた彼にとってカービィを失うことだけは何事にも耐え難いことだった。
更に彼を犠牲にしてしまったという思いと彼を失いたくない思いがメタナイトを責め苛む。
だから、メタナイトには焦りがあるのだ。
チリドッグが昔よりも知恵を付けて仕留めにくくなっている事実もその焦りに更に拍車をかけてしまう。
そしてその焦りが普段の彼から冷静さを見失わせ、彼自身さえも窮地に誘い込む。
実際さっきの渡り合いもソードとブレイドが介入しなければ、少々危ないところだった。
二人の心配を知ってか知らずか、メタナイトは忍ばせてあった懐中時計を取り出す。
時計の針は間もなく午後六時を指すところだった。
「あと残り六時間しか残されていない。急げ!!」







チリドッグが城内に逃亡した報せが出てから六時間が経った。
いつもはワドルディ兵士で賑わっている廊下は魔獣を恐れて誰一人通る者はいない。

『こら~!!腹が減ったぞ、料理はまだでゲスか!?』

厨房のスピーカーからエスカルゴンの怒号が飛んだ。
厨房では料理が未調理のまま、手つかずで放置されている。
現場監督をしていたワドルドゥ隊長が調理役のワドルディを代表して返事をした。
「やめさせました。非常事態なので・・・」
火を扱う厨房は非常事態において二次災害、火事になる可能性が高い。
その危険性を考慮してワドルドゥは火を扱わせないまま、厳重に警備を強めていた。
しかし、そんなワドルドゥの思惑などワガママなデデデに通じるはずがなかった。
今度はデデデの怒号がスピーカー越しに飛んできた。
『バッカモン!!非常事態でも腹は減る!!とっとと料理を運ぶゾイ!!』
「は、ははっ!!」
城の主であるデデデの命令には忠誠心の厚いワドルドゥやワドルディはいかな理由があろうと背けない。
命じられるまま、急いで火をおこして料理を完成させるとワドルドゥの警戒の元、デデデの部屋へ料理を運び出した。
誰一人いなくなった厨房、火は消し止められていたが鍋に張られた油は高温で冷めるまで放置されていた。
その時、頑丈な換気扇のフィルター板が前置き無く油の上に落下した。
落下の衝撃で飛んだ火花が油に引火して瞬く間に燃え広がっていく。
厨房はあっという間に火の海と化した。
凄惨たるその光景に換気扇の向こう、排気口から微かに舌なめずりする音が聞こえた。






「!!」
きな臭い匂いにメタナイトは歩みを止めた。
振り返ると、通路の奥からきな臭い煙がどこからともなく漂ってきている。
通路の奥にあるのは、厨房。
(まさか・・・!!)
嫌な予感がメタナイトの脳裏をかすめる。
厨房があるのはパーム大臣夫妻の部屋の下、メタナイトの部屋は離れているとはいえ煙が及ばない可能性はない。
「これは・・・」
「おそらく厨房で何かあったのだろう。ソード、お前は大臣閣下を安全な場所へお連れしろ。ブレイドはフーム達を別の場所へ」
「しかし、卿は・・・?」
ブレイドの問いにメタナイトは押し黙った。
時計の針はもう夜九時を過ぎている。
もう残り三時間も残されてはいない。
「私は、チリドッグを倒す」
「お一人で!?無茶です!!おやめください!!」
「奴のエネルギーの源は炎です。今はこちらの分が悪いのは卿もご存じのはずです」
ソードとブレイドは今にも向かってしまいそうな主人を懸命に引き留めた。
二人のもっともな言い分にメタナイトのギャラクシアを握る手が強くなった。
地獄の炎から生まれたチリドッグは燃えるほど強くなる。
厨房でのこの火災が奴によるものならばおそらく強化している、迂闊に攻撃を仕掛ければ返り討ちに遭う危険が高い。

「・・・それでも、私は」

そう呟いた言葉は、かき消されそうな程小さくてソードとブレイドの耳には届かなかった。
目の前でいつの間にか類焼して燃え広がってきた炎が踊っている。

踊っている炎の動きがメタナイトの脳裏に初めてカービィが現れて戦った時の光景を呼び覚ます。

それから順に、今までのカービィの記憶全てを・・・。


『メタ、ナイト・・、きょお』


初めて自分の名前を呼んでくれたときの笑顔がちらついて離れない。
もう二度と、あの笑顔を失いたくはなかった。

時計の針が十時を告げた。
その音に突き動かされるように、メタナイトはギャラクシアを握りしめて飛び出していた。
「「卿!!」」
ソードとブレイドが叫んだのが遠くで聞こえた。
その声を振り切るようにメタナイトは速度を上げる。


(・・・すまない。ソード、ブレイド。だが、私はカービィを失いたくはない!!)
 

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