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ゲームのちょっとした綴り書き。 気の向くままに更新します
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スマブラ、フォリン好きに20のお題、書き上げました。


7.きずついて、きずつけて

このお題を見た途端に、咄嗟に思い浮かんだのが姫川ゼルダ『時のオカリナ』上巻の大人編3話「最愛の旧友」。
このお話、初めて読んだときにボロボロ泣いた記憶があります。すごく感動するイチオシの話です。
ちなみに今回の作品のタイトルはここから文字ってます。


大乱闘は戦うことがメインなので、ちょっと異色風な感じに仕上げました。
姫川先生も書いてますが、リンクってやっぱり強くて格好良くて優しいのが何よりの持ち味だと思います。
姫川ゼルダと比べたら、とても泣けもしない話だと思いますが、愛だけは精一杯込めましたよ。
(しかし、それでもリンクの持ち味を引き出せたかは謎)

『Beloved best friend』
(最愛の親友)
 

いやだ・・・!目を覚まして・・・!
お願いだから、側から離れて・・・。
これ以上、攻撃しないで。
そうしてくれないと・・・。


ダイスキナキミヲコロシテシマウカラ




『player 2 defeated!!』

「・・・あ」
アナウンス音にリンクは我に返った。
リンクの剣を持った手が震える。
その手にはさっき、切ったものの感触が生々しいくらいに残っていた。
呆然としてリンクは辺りを見渡す。
大乱闘のチーム戦、ステージ上にいるのは対戦相手のクッパとガノンドロフ。
そして、自分の側にいたはずのパートナーは、いない。

「うわああああああああああああああああああああ!!!!!!」





その日の大乱闘はたったひとつの試作品アイテムのせいで悲惨な幕を閉じた。
マスターハンドが新しく考案したアイテム、『ブレインコントロール』。
チーム戦のみ有効のこのアイテムは、敵チームのファイターに投げるとそのファイターが一定時間仲間割れを起こすという異色なアイテムだった。
早速テストとしてチーム戦、リンク&フォックスVSクッパ&ガノンドロフのカードに送り込んだ。
アイテムとしての効果は予想通りの機能だった。
クッパに『ブレインコントロール』を投げられたフォックスはそれまで味方だったリンクに攻撃を始めた。
ところが・・・。
リンクは反撃してフォックスを一刀両断でたたき落とした。
すると、今度は狂ったように猛然とクッパやガノンドロフに襲いかかる。
絶対的有利だったクッパ達だが、まるで鬼神を思わせるリンクの戦いぶりにあっという間に飛ばされてしまった。
そして、騒ぎはそれだけに止まらなかったのだ。

「うわあああああああああああああああああああああ!!!」
「リンク!!やめなさい!!」
「慌てんな!!フォックスの怪我はもう治りかけてる!!」
大乱闘が終わるやいなや、リンクは自分の剣を壁に打ち付け始めたのだ。
マスターソードは聖剣、そんなことをしても一向に折れるはずがない。
むしろ、剣圧でそれを扱っているリンクの手がボロボロになっていく。
だが、リンクはそれでもやめようとはしない。
まるで剣が自分を滅ぼすのを望んでいるかのように見えた。
あまりに酷い荒れようにマリオとファルコが止めに入る。
「離せっ!!止めるな!!」
「さっきの乱闘は君のせいじゃない!もうよすんだ!」
「心配しなくても、フォックスが起き次第俺がてめえをぶん殴ってやるよ!!」
フォックスは『ブレインコントロール』の後遺症のせいかまだ目覚めていない。
マリオが診断したのだから間違いないのだが、リンクはフォックスが起きられないのも自分のせいだと思っているらしかった。
なおも暴れるリンクの耳にハープの音色が響いた。
覚えのある曲に思わず顔を上げる。
ハープを奏でていたシークはゆっくりとリンクに近づく。
そして、そっと手を伸ばしてリンクの頬に触れた。
「辛かったな・・・」
たった一言、それだけをシークは口にした。
途端にあれほど荒れていたリンクが嘘のように大人しくなった。
そして、青い眼に涙が浮かんだと思うと、その場に崩れ落ちた。
シークはリンクを宥めるようにそっと小さくなった背中を撫でる。
「シーク、おれ、おれ、また・・・」
「わかっているよ。君のせいじゃない、君も君の友も君たちのあずかり知らぬ所で踊らされていただけだ」
「でも、俺は、・・・俺は・・・!!」


リンクの悲痛な叫びは言葉にならなかった。
隙を見たシークが急所を突いたせいでリンクの意識がどんどん遠ざかっていく。


『最愛の友達を、また殺していたかも知れないんだ』





「・・・ぅん」
「! 気がついたか、フォックス」
ぼんやりと目を覚ましたフォックスの耳に聞き慣れた声が聞こえた。
猛禽類独特の鋭い目つきが自分を覗き込んでいるのが、だんだんはっきりと映っていく。
「ファルコ・・・?ここは・・・」
「医務室だ。あのクソッタレなアイテムのせいでずっと寝てたからな。安心しろ、あのアイテムはファイター殆どが使用反対を訴えたせいで廃止になった」
ファルコはフォックスが気を失っている間に起こった出来事を伝える。
アイテム『ブレインコントロール』はファイターの署名と反対ストライキによってマスターハンドは渋々消去することに決めた。
何しろ、廃止しない限りファイターがまともに戦わないと言い出したものだから、それをされては大乱闘制度が崩壊してしまう。
マスターハンドもそれだけはさすがにいやだったらしい。
既にクレイジーハンドが処分しているとのことだった。
「ずっと?・・・!!」
フォックスはそれまで忘れていたさっきの大乱闘を思い出した。
クッパに何か投げつけられた途端、意識が遠くなって体だけが勝手に自分の意志に反して動いていた。
止めようと思っても止められない。
そして、その状態になったフォックスが一番に行ったこと、仲間であり親友であるリンクを攻撃した。
「そうだ!!リンクは!?それに試合!!俺のせいでリンクに怪我させてないよな!?結果はどうなったんだ!?」
我に返ったフォックスは矢継ぎ早にファルコに質問を浴びせる。
だが、ファルコも口にするのにはかなり抵抗があるようだった。
「リンクは無事だ、傷ひとつしちゃいねえ。試合もお前等が勝った。リンクが一人で片した」
「え?どうして・・?」
フォックスのもっともな疑問にファルコは顔をしかめた。
洗いざらい白状するのは簡単だが、それを言ってはフォックスを傷つける恐れがある。
それにリンクが何故あれほどまでに荒れたのか、ファルコはその理由がわかっていなかった以上、勝手な憶測で話はできなかった。
だが、フォックスも諦めそうにない。

「リンクの心の傷、それを君が開いたのさ。操られて攻撃したことでね」

その場に一際涼しい声が響いた。
ファルコが声の主を捜している間にその人物はフォックス達の側に着地する。
まるで忍者のような気配の感じさせなさ、相変わらずの神出鬼没ぶりシークだった。
「てめえ、まるでフォックス一人が悪いみたいな言い方・・・」
「シーク・・・。リンクの心の傷って・・・?」
食ってかかったファルコを遮るようにフォックスはシークの言葉について問いただす。
フォックスが知らないリンクの過去、それをシークは知っているのだろうか。
シークはため息一つ付くと話し始めた。
「最初にあの試合の結果を教えようか。まず、リンクが君を撃墜して、我に返ったリンクはクッパとガノンドロフも徹底的に打ちのめした。まるで、鬼神のようにね」
「!!」
「彼は過去に自分の大切な友を殺している。・・・そう、今回の君と同じく、相手も操られた状態で、リンクには戦って倒すことしか出来なかった・・・」



『俺は、怖いんだよシーク。まるで、鬼が宿っているみたいだ』
邪龍ヴァルヴァジアを倒した後、何かの機会で一緒に野営することになったシークにリンクはそう告げた。
戦う前はあれほどいやだったのに、出来れば思い出して欲しかったのに、一度戦いのスイッチが入ると我を忘れたように攻撃の手を緩められなくて、止めを刺した。
子供の頃、孤独だったリンクに心を開いてくれた一匹の龍。それがヴァルヴァジアだった。
その能力をガノンドロフに目を付けられて操られたのだが、その魔力は強力でリンクの力では呪いを解くことは出来なかった。
『・・・俺は、友達を殺したんだ。この手で・・・』
リンクはそう言って震える手を握りしめた。
シークはかける言葉もなく、じっとその様子を見守っていた。
誰よりも雄々しく、誰よりも勇敢なリンクだが、ひとつだけ勇者としての弱点があった。
それは、戦いにはあまりにそぐわない優しさと分け隔てなく愛する心・・・。



「(あの戦いが、リンクの心にトラウマとして残ってしまった・・・)」
リンクの深い心の傷となった友を失うこと。
シークも試合の様子は見ていたからわかる。
フォックスがリンクに襲いかかってきたとき、それはまさにあのヴァルヴァジアとの戦いの再現だった。
追い詰められるとリンクには残された方法はひとつしか残っていない。
「だから・・・」
フォックスがリンクの側にいる限り、リンクの苦悩は続く。
シークはその決断を迫るために、ここへ来た。
『リンクとは、もう縁を切って欲しい』
そう切り出そうとしたシークの側を一瞬で何かが通り過ぎる。
「フォックス!!」
ファルコが叫んだが、もう遅かった。
駿足でシークの側を抜けたフォックスは部屋を出て廊下を一目散に駆け抜ける。
シークとファルコがフォックスを追って部屋を出たが、廊下にはフォックスの姿はどこにも見えなかった。




リンクは自分の部屋のベッドで寝かされていた。
苦しいのかうめき声が時折漏れる。

『イタイヨ、リンク・・・。』

『リンク・・・。』

最初、響いていたのはヴァルヴァジアの声。
それが徐々に片言から、れっきとした言葉に。
鳴き声のような声から男の声へと変わっていく。

『リンク、痛いよ・・・』

「!!」
聞き慣れた声にリンクは荒い息づかいのまま跳ね起きた。
今のは間違いなくフォックスの声、そう認識したと同時にフォックスに斬りつけたときの残像が瞼に浮かぶ。
「(まさか・・・)」
嫌な予感に全身が震える。
震えを抑えるようにリンクはしっかりと腕を握りしめた。


コンコン


「!!誰だ!?」
ノック音に過剰に反応するリンク。
返ってきた声は穏やかだった。
「俺だよ、リンク。フォックスだ、入っても良いか?」
聞き慣れた声、その声にリンクはさっきの震えが納まっていくのを感じた。
しばらくして、フォックスがドアを開けて部屋の中を覗き込む。
様子だけを見れば、元気そうだった。
「・・・怪我、ないのか?」
「ああ。この通り、ピンピンしてる。平気さ」
フォックスが笑ってリンクの問いに答える。
リンクは黙ってフォックスを見ていた。
その目に徐々に涙が溜まって溢れ出す。
シークから話を聞いていたフォックスはそれを見ても驚かなかった。
ゆっくりとリンクの側に歩み寄ってそっとその背中を支える。
「ごめんな、リンクに辛い思いさせて・・・。俺がもっとしっかりして、自分抑えられたら、リンクをこんなに傷つけなかったのに、本当にごめん。そして、礼を言う。俺がリンクを傷つける前に、俺を止めてくれてありがとう」
「・・・っ!!」
フォックスの言葉にリンクは激しく頭を振った。
礼なんか言われる筋合いないのに、むしろ縁を切られて当然だと思っていた。
どんな理由があったにせよ、大事な友達をその剣に掛けた。
その罪はとてもそんな言葉で許されるはずないと思っていた。
でもフォックスは生きていて、リンクを許してくれると言ってくれた。
そのことが何よりも信じられないくらい嬉しかった。

「(怖かったんだ・・・。俺は、友達を傷つけることも、それ以上に大切な友達を、フォックスを失うことが何より怖かったんだ・・・)」

フォックスはリンクの心の内がわかっていた。
誰よりも優しくて、誰よりも孤独を厭う心の持ち主、それは今までの思い出が教えてくれた。
子供のように泣きじゃくるリンクをフォックスはそっと宥めるように撫でた。


「もう、大丈夫だよ。リンク」


 

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