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ゲームのちょっとした綴り書き。 気の向くままに更新します
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昨日、熱出して小説更新ストップさせてしまいましたが、本日全快しました!!
(タラリラッタラー♪:回復ファンファーレ)


39.0くらい熱あったので、親は「インフルエンザじゃないか?」と心配してましたが、さすがに一日で納まるはずないので、陰性=ただの風邪だったようです。
これからは気をつけます。m(_ _)m


本日は先日、尻切れトンボで終わってしまったスマブラ番外の後編です。
メタカビ←ダメタも早くUPしないと・・・。

・・・でも夏場にこんなあっついの書いたり読んだりしたら余計暑くなりそう;;;

『It is not possible to love even if it loves.』
(愛していても愛せない)



『非常事態発生、非常事態発生!!』



「何事だ!?」
「なんだ!!」
「一体何が!?」
城内に響き渡ったアナウンスにファイター達は全員飛び起きた。
間を置かずにマスターハンドからの通達がスピーカーを通じて告知される。
『城内にバグが逃亡!!ファイター達は各自安全な場所に避難しなさい!!』
「バグだって!?それがこの城に・・・」
マリオが信じられないように声をあげる。
マスターハンドから次の指令が続いた。
『バグの正体がわかった。影虫と同じ、コピー系のバグだ。取り憑かれたらバグを消去するのは厄介になる。皆、くれぐれも用心しなさい。繰り返す・・・』
「まずいな、このままじゃ・・・」
「マリオ、ピット達を連れてみんなを大広間に集めてくれ。バラバラになっているよりも一カ所に集まっていた方が安全だ。俺はこれからバグ対策のためにアイテム倉庫から強力な武器やアイテム取ってくる」
「わかった」
リンクの提案にマリオは頷いてピット達を大広間へ誘導し始めた。
采配は誰よりもマリオが行った方がファイターは従いやすい。
リンクは一人、アイテム倉庫へと足を進める。
すると、優勝常連のフォックス、キャプテンファルコン、メタナイトが途中で合流してきた。
皆考えることは一緒だったらしい。
他の優勝常連メンバーは大広間の警備に当たっているとの事だった。
アイテム倉庫へ向かいながらリンクはフォックスに尋ねる。
「フォックス、バグの行方は?」
「まだわからない。大広間に避難させたロボットがサムスと一緒に探してくれているけど、影虫と同じタイプだから見つかりにくいって」
「とりあえず、武器の確保が先だ。鍵はひとっ走りして取ってきた。急ぐぞ」
先頭に立って走り出したキャプテンファルコンに、フォックス、メタナイト、リンクは後に続いてアイテム倉庫への道を急いだ。



大広間には深夜にも関わらずマリオが集めたファイターが、アイテムを取りに行った四人以外全員が揃っていた。
ロボット、サムス、ウルフ、スネーク等メカに強い面々は必死にバグの行方を追っていた。だが、バグは想像以上にすばしっこく、神出鬼没で足取りが全く掴めない。
見守っているファイター達にも緊張の色が消えなかった。
「!!ミツカリマシタ!!ばぐニチガイアリマセン!!」
「本当か!?」
「ここじゃないよね!?」
「ロブ、奴はどこにいる!?」
ロボットがようやくバグの足取りを掴んだ。
矢継ぎ早に質問を浴びせるみんなの前に、ロボットは壁に城の地図を映し出す。
その図には城のフロア、ファイター一人一人の名前、そして赤く点滅している存在『バグ』が映っていた。
バグの移動経路は大広間から反対側へと向かっている。
徐々に下へ、城の端の部屋へと、そしてその延長線上にはアイテムを取りに行った四人のアイコンが映っていた。
「こいつは、まさか・・・!!しまった!!」
その映像を見たスネークは戦慄が走るのを感じた。
それを見たマリオも思わず身を乗り出して叫んだ。
「バグの狙いは私たちじゃない!!アイテムを取りに行くと想定されていた優秀なファイターだ!!」




その頃、アイテム倉庫の前にたどり着いた四人はファルコンが鍵を開けるのを待っていた。
フォックスのインカムにファルコから通信が入ったのはまさにその時だった。
「ファルコ。待っててくれ、今アイテム倉庫に着いたところだ。これから武器持ってそっちに・・・」
『そうじゃねえ!!フォックス、他の三人も気をつけろ!!バグがお前等狙って付けてきてやがる!!』
「なにっ!?」
「なんだって!?」
「なんだと!?」
ファルコの報せに他の三人に緊張が走る。
そして各自油断なく辺りを見渡すが、薄暗い廊下にそれらしい影は見つからない。
「どういう事なんだ、ファルコ!!」
『いいか?バグは想像以上に賢い奴だったらしい。騒ぎ起こしたらお前等みたいな腕利きがアイテム倉庫に行くって予測済みだったんだよ。影虫と同じタイプの奴だから、コピーするなら断然強い奴に取っ付きたかったんだろう。とにかく油断するな、奴はもうかなり近くまで・・・』
フォックスがファルコの通信に気を取られていたその時、リンクはフォックスの背後で微かに蠢くそれを見た。
それは気配を消しながらものすごい速さでフォックスの背後に迫ってくる。
だが、フォックスはその気配に気がつかない。
「フォックス、危ない!!逃げろ!!」
「えっ・・・?うわあっ!!」
フォックスが振り返ったと同時にバグがフォックスに狙いを定めて覆い被さるように飛びかかってきた。
咄嗟の事態に反応が遅れる。
いかに俊敏な動きを誇るフォックスといえども、至近距離から襲われてはひとたまりもない。
「フォックス!! っ!!うわあああああああああっ!!」
「つつ・・・、っ!!リンク!!」
フォックスを庇って咄嗟にその場に割り込んだのはリンクだった。
だが、今度は庇ったリンクにバグはまとわりつく。
苦しむリンクに思わず手を伸ばしかけたフォックスだが、それを止めたのは他でもないリンクだった。
「触るなフォックス!!こいつ、ただの、バグじゃない!!」
『・・・その通り』
リンクの中から低いくぐもった声が聞こえてきた。
バグはリンクから離れると、距離を置いて廊下の端へと移動する。
すぐさまバグに向かって構えたファルコンとメタナイトだが、そのバグの姿に目を疑った。
最初は影虫のような形状をしていたバグが徐々に人の形へと変化する。
輪郭がはっきりして、その姿、容姿、武器や出で立ちまで細かく表現されていく。
その場に現れたバグは、全身黒い影のような所を差し引けば、リンクと全く同じ出で立ちをしていた。
「こいつは・・・!!」
「さっきリンクに取り憑いたとき、リンクをコピーしたのか!!」
『ご名答、メタナイト。くくっ、最初はフォックスにしようかと思っていたが、思いも掛けない奴をコピーできた。まさか、こんなくそ真面目そうな奴にこれほど心の闇があったなんてな』
「なんだと!?お前、よくもリンクを!!」
バグに襲われて未だ体力が回復しきっていないリンクを支えながらフォックスが睨みつける。
思わずバグに挑みかかりかけたフォックスを制したのはメタナイトだった。
メタナイトはバグの目、赤く光るその目を睨みつける。
「なるほど、それがお前の力の源。人の悲しみや苦しみを糧に力を増すというのか、だから最初にフォックスを・・・」
『生真面目な奴ほど秘めている苦しみや苦悩は多い。だが、予想外の展開とはいえ、こいつの抱えている闇も大したものだ』
「外道が、貴様にバグなどという言葉は似合わん。闇(ダーク)そのものだ」
『・・・リンクの闇、ダークリンクか。それもいい』
メタナイトの指摘にバグ、『ダークリンク』はまんざらでもない表情を浮かべる。
そしてダークリンクはフォックスに支えられているオリジナル、リンクを見下ろした。
『お前の心の闇、確かに受け取った。その代わりと言ってはなんだが、お前の望み叶えてやろう。・・・あの姫君に抱いていたお前の抑圧した思いを』
「!!貴様、姫様に何を・・・」
ダークリンクの言葉にリンクは顔を上げる。
ダークリンクはその反応ににんまりと口元を釣り上げて笑った。
『それはお前が一番よく知っているはずだろ?リンク。本当は思ってたじゃないか、『姫様が誰にも触れず、誰も見ず、どこにも行かず、自分だけのものに』ってな。我慢ならないんだろう、他の男に取られることが、他の男と結ばれることが!』
「まさか、お前!!」
思いついた憶測にその場の全員に緊張が走る。
闇は心に秘めて然るもの、その欲望は表に出してはいけない。
だが、具現化されたその欲望の塊は止まることを知らない。
ダークリンクは凄絶に笑う。
その笑みは闇そのものだった。
『その望み、叶えてやるよ。手始めに、あの姫様から血祭りだ!!』
「ほざけっ!!そうはさせるかっ、ファルコンパンチ!!」
鷹の炎がダークリンクに襲いかかる。
だが、当たる刹那、ダークリンクの姿は元の影虫のような形状になって闇に溶け込んでしまった。
もはやその場にはダークリンクの姿はない。
ダークリンクの高笑いだけがその廊下に響き渡った。
「消えた・・・」
「まずいな、コピーしたとはいえバグだった頃の神出鬼没さは健在か」
「それよりも奴は一体どこへ・・・」
油断なく辺りを見渡すフォックスだが、ダークリンクの姿はどこにも見えない。
コピーされて弱っていたリンクがふらふらしたまま立ち上がる。
そして、アイテム倉庫の中にある、大広間へと続くワープゾーンに足を進めた。
「奴の狙いは、大広間の姫様だ。早く助けに行かないと・・・」
だが、足下がおぼつかないのかすぐに均衡を失ってうずくまってしまう。
その様子にフォックスとファルコンは駆け寄って支えた。
「無茶だ、リンク!!その体であいつと戦うなんて!!」
「俺のファルコンパンチさえ喰らわない奴だ。下手したら返り討ちだぞ!!」
「っ!!だけど・・・!!」
苦しさを耐えながら、リンクは一生懸命意識を保つ。
リンクの脳裏にゼルダの姿が浮かんだ。
絶対に守ると誓った大切な人、二度と危険な目に遭わせないと自分の心に誓った。
その心に偽りはない。
リンクは手にしたマスターソードを強く握りしめた。
「あれは俺の心の闇、俺の弱さが招いた心の具現だ。俺自身の手で片を付ける!!」
強く言い募られて、ファルコンもフォックスもそれ以上何も言えず押し黙る。
リンクは一度決めたらてこでも譲らない。その意志の強さは誰よりも強かった。
一人、その様子を離れて見ていたメタナイトが口を開いた。
「ならば、急いで先に戻れ。我々は武器を調達次第、急いで向かう。それまでに奴をなんとしても食い止めろ」
「・・・。わかった!!」
その言葉に後押しされるように、リンクはワープゾーンに足を踏み入れた。
リンクの姿は一瞬にして、アイテム倉庫から消えた。





その頃、大広間では大騒ぎだった。
バグのアイコンが消えたと思ったら、今度はリンクのアイコンが二つになった。
緑のアイコンと黒のアイコン、その場の様子が詳しくわからないファイター達の間に不安と恐怖が広がっていく。
「ロブ、どういう事なんだ!?何故、リンクが2人いる!?」
「カイセキチュウデス!!マッテクダサイ!!」
「おい、フォックス!!今どうなってるんだ!?・・・くそっ、妨害電波でつながらねえ!!」
「みんな、落ち着いて!!冷静になるんだよ!!」
パニックに陥りかけたみんなをマリオが必死で止めにかかる。
大広間の奥で身を潜めていたピーチも恐怖でぶるぶる震えている。
怯えているピーチを宥めるように側にいたゼルダがそっとその手を取った。
「大丈夫、安心してください。マリオが采配をしてくださっていますから、きっと助かります」
「・・・ゼルダは気丈ですのね。怖くないんですの?」
ピーチは信じられないようにゼルダの顔を見上げる。
ゼルダは落ち着き払っていつもと様子が少しも変わっていない。
名だたるファイター達、悪党であるクッパやガノンドロフでさえも急展開の現状にイライラしているというのに、ピーチにはゼルダが落ち着いていられる理由がわからなかった。
「怖くないと言ってしまえば嘘になりますけど、怖がっていても何も解決にはなりません。今できることは、武器を取りに行ったリンク達が戻ってくるのを待って、バグに備えることです。だから、きっと大丈夫ですよ」
辛いとき、逃げ出したくなったときこそ『大丈夫』と自分に言い聞かせて勇気を出す。
いつぞやゼルダがリンクから聞いた勇気を出すための秘訣。
その言葉に励まされたように、ピーチも頷いて少し明るい表情を浮かべた。

『・・・さすがはハイラル王家の姫君。殺し甲斐のあるお方だ』

「っ!!」
「ゼルダ!!」
ゼルダの背後に突然現れたダークリンクは闇色をしたマスターソードをゼルダに向けて振り下ろす。
咄嗟に振り返ったゼルダだが、勢いに乗った剣はまっすぐゼルダの体を捉えていた。
強襲にゼルダには対抗手段は見つからない。
側にいたピーチも思わず手で口を覆った。


ギインッ!!


切り裂かれる刹那、その場に割り込んだ剣がダークリンクの剣を受け止める。
ゼルダを庇うようにその場に立ちはだかったのは戻ってきたリンクだった。
「リンク!!」
『おや、オリジナルが何をするのやら。お前の望み、叶えたくないのか?』
「っ、姫様には、傷ひとつ負わせたりはしない!!姫様を守ることが、俺の望みだ!!」
『ほう・・・』
その言葉にダークリンクは愉快そうに眼を細める。
鍔迫り合い状態から軽々と飛び退くと、再び剣を構えた。
その視界に映っているのは、主君を守ろうと立ちふさがっている勇者の姿。
『面白い。・・・ならば、お前の全てを否定してやる』
そう言うが、ダークリンクはリンクに斬りかかる。
その場でリンクとダークリンクとの激しい攻防が始まった。



「これは、一体・・・」
マリオ達はその光景が信じられないように固唾をのんで見守っていた。
助太刀しようにも、密着状態で一方はゼルダを背後に守りながら戦っているから下手に手を出すと本物のリンクやゼルダを傷つけてしまう恐れがある。
一体何が起こっているのか、どうしたらいいのか。
迷っていると、ワープゾーンからアイテムを調達に行っていたファルコン、フォックス、メタナイトが戻ってきた。
「ちっ、もう始まっていたか!!」
「くそっ!!バグ、じゃなかった。ダークリンクの奴、手を出せないようにあんなに間合いを詰めて・・・」
「一体何があったんだい!?」
持ってきた武器を受け取りながらマリオは戻ってきた三人に詰め寄る。
他のファイターにも武器を渡しに行ったファルコンとフォックスに代わり、メタナイトがアイテム倉庫に向かう道すがらで起こったことをマリオに説明した。
「あれがバグの姿だ。奴はリンクの心の闇とその姿をコピーした、リンクの邪心の姿『ダークリンク』」
「ダーク・・・、リンク・・・?」
「奴は人の心の闇を糧に生きるバグだった。そして、より深い絶望と更なる破壊を繰り返し、世界の均衡を崩す。奴はリンクのゼルダ姫に対する思いと苦悩に目を付け、リンクもろとも彼女を殺すつもりだ!!」
「なんだって!!」
その言葉にマリオは戦っているリンクに視線を向ける。
防戦一方のリンクは明らかにダークリンクに押されている。
だが、決してその場から逃げ出そうとする素振りは見せない。
ダークリンクの攻撃を受けながらも、自身を盾として必死にゼルダを庇っていた。
「おまけに奴はバグだった頃の原型も忘れてはいない。攻撃を受けそうになれば、すぐさま形状を変えて逃げてしまう。リンクがゼルダ姫から離れないのは、それをした途端に奴が姫を襲うのが目に見えているからだ」
「リンク・・・」
マリオは黙ってリンクを見る。
いつ倒れたっておかしくない状態だった。
だが、リンクは絶対にゼルダから離れようとはしない。
絶対に守ると決めたリンクの信念がそうさせていた。

『俺は姫様の忠実な臣下』

昼間のリンクの言葉がマリオの脳裏に浮かぶ。
マリオはその言葉を振り払うように頭を振った。
「(君の思いは、そんな建前の言葉なんかで納められるものじゃないだろう・・・)」




「リンク!!もうやめて、やめてください!!それ以上やってはあなたの体が・・・」
リンクに庇われたままのゼルダが声をあげる。
いつもはゼルダの命令に忠実なリンクだが、この時ばかりは別だった。
傷だらけになってもなお、ゼルダから離れずダークリンクの攻撃からゼルダの身を守る。
荒くなった息混じりでゼルダに掛ける声は優しかった。
「大丈夫です、姫様。姫様は、僕が必ずお守りします。どうか、ご安心を・・・」
『笑止!!』
ダークリンクがその言葉を遮るようにゼルダに向けて突きを繰り出した。
そうはさせないとリンクは右腕を広げてゼルダを庇う。
黒いマスターソードはリンクの右肩を貫いていた。
「ぐうっ!!」
「リンク!!」
『ははは、大した忠誠心だな。だが、これでもう弓は使えないぞ』
これからなぶり殺してやる、とダークリンクは手にしたマスターソードを抜こうと力を加える。
ところが・・・。
『っ?』
リンクの右肩を貫いたマスターソードは刺さったままぴくりとも動かない。
訳がわからず戸惑っている間にリンクはダークリンクのマスターソードを右手でしっかりと握りしめた。
「・・・ようやく捕まえた。この状態じゃ、影虫みたいになって逃げることも出来ないだろ」
『!!まさか!!』
リンクの狙いを察したダークリンクに初めて焦りの表情が浮かぶ。
激痛に顔を蒼白にしながらも、リンクは不敵に笑う。
そしてダークリンクの背後、アイテムを調達してきたフォックスに頷いた。
それは、移動する前にあらかじめ決めておいた合図。
「受け取れ、リンク!!」
フォックスが投げたスマッシュボールはダークリンクの右端をすり抜けて、リンクの利き手、左手に飛ぶ。
マスターソードを振り下ろしたリンクの手に黄金の正三角、トライフォースが浮かび上がった。
それがダークリンクの最後に見た光景だった。


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』


トライフォースラッシュの止めの一閃で、ダークリンクは耳をつんざくほどの断末魔と共に消滅した。
大広間に差し込んできた夜明けの朝日がその場を明るく照らす。
闇は去った、リンクの勝利だった。
「・・・終わった」
「勝ったんだ!!」
緊張が解けたのと闇を撃退した勝利感に大広間が歓声に包まれる。
その様子を微笑んで見守りつつ、リンクはゼルダを振り返る。
ゼルダは怪我ひとつ負っている様子はない。
リンクはほっと胸をなで下ろした。
「・・・お怪我はありませんか?姫様」
「いいえ。リンクが庇ってくれたから、私は大丈夫です」
「そう、ですか。・・・よかった」
ほっと笑ったリンクはその一言を最後に、糸が切れたように力なくその場に倒れた。







数日後。
「もう大丈夫だって言ってるだろ!!」
「だめっ!!本当なら全治一ヶ月の重症患者だったんだから!!」
「ほら、リンク。主治医の言うことにちゃんと従って」
あの戦いの後、医務室に運ばれたリンクは瀕死の状態だった。
元々バグを取り逃がしたマスターハンドにも責任はあるとして、マスターハンドが干渉できる限りでリンクの治療に携わった。
お陰で、全治一ヶ月かかるところの怪我は驚異的な速さで回復した。
まだ傷跡は残っているが、動く分には何ら支障はないから早速大乱闘に復帰しようとしたリンクだが、それは主治医のドクターマリオが許さない。
お見舞いに訪れたフォックスの目の前で、押し問答が続いていた。
「これ以上寝てたら体が鈍る!!ずっと部屋空けているのも心配だし!!」
「何言ってるの!!そんなことより、体の方を心配するのが最優先だよ!!ピット達に心配かけさせないように全快するまで退室させないからね!!」
「そうだよ。カービィ達だってみんな面倒見てくれてるから大丈夫だって。何も心配することないよ」
今にも医務室から出てしまいそうなリンクを抑えながら、フォックスはドクターマリオと2人がかりでリンクをベッドに戻そうと必死だ。


コンコン


医務室をノックする音がしたと同時に、ドアが開いた。
やって来たのはゼルダだった。
その姿を見た途端にリンクの動きが止まる。
その間にドクターマリオが問答無用でリンクをベッドに押さえつけた。
「これはゼルダ姫。わざわざリンクのお見舞いに?」
「ええ。お邪魔でしたか?」
ゼルダの言葉にフォックスは笑いをかみ殺しながら首を振った。
そして、ベッドに押さえつけられたまま身動きできず呻いているリンクをちらっと振り返って、ゼルダに笑いかける。
「いいえ。ちょうど良いタイミングで来てくれましたよ。リンクがまた無茶して医務室から脱走しようとしていた所でしたから」
「あっ!!バカッ、フォックス!!姫様にそんなこと言うな!!」と、背後でリンクが喚いている声が聞こえた。
フォックスはその言葉を気にするわけでもなく、にっこり笑って続ける。
「俺も用事済んだし、そろそろ戻ります。ゼルダ姫、ごゆっくりしていってください」
「ああ。それじゃあ、私もそろそろ大乱闘のスケジュールがあるし、リンクの見張りと包帯の取り替えはゼルダ姫にお願いしようかな?」
フォックスに便乗して白衣を脱いだマリオも、抗議の声をあげるリンクを無視してフォックスの一緒にドアへと歩き出す。
「おい!!人の話ちゃんと聞けっ!!2人とも、待てったら!!」
「「では、ごゆっくり」」
その言葉を残してマリオとフォックスは医務室から出て行ってしまう。
その場に残されたのはリンクとゼルダの2人だけだった。
「あいつら・・・」
2人が立ち去った後をうらめしげにリンクは睨みつける。
ゼルダはベッドの側にある椅子に腰を下ろすと近くに置いてあった包帯に手を伸ばした。
「まだ、無茶をしてはいけませんよ。リンク。包帯、取り替えましょうか」
「ひ、姫様が!?」
「マリオに頼まれましたから」
ゼルダの言葉にリンクの目に剣呑な光が走る。
言われるがままに大人しくシャツを脱いだリンクだが、頭はそれと別の場所に及んでいた。
「(覚えてろよ、マリオ・・・)」
するすると古い包帯が取り払われていく感触がして、最後の一片が剥がれた。
包帯が全て取り払われると、その体に残った傷跡が生々しく曝される。
その光景にゼルダが息を詰める声がした。
すぐに新しい包帯が慣れた手つきでリンクの怪我に当てられて、巻かれていく。
巻き終わるのにものの数分もかからなかった。
そっ、とゼルダの手がリンクの怪我、特に一番深手だった右肩に触れる。
リンクはそのあたたかい感触に目をすがめた。
「ごめんなさい。私を守るために、こんな傷を負ってしまって・・・」
語尾が小さく震えている。
微かに肩越しに振り返る、ゼルダの美しい瞳から涙がこぼれていた。
思わず手を差し伸べそうになって、それが主君に触れる無礼だと気付きかけたリンクは手を潜める。
だが、この時不意にある言葉が思い浮かんだ。


『その短い命を惜しまずに後悔せず生きる方法を探せばいい』


あの日、メタナイトが言った言葉。
まるで彼自身にも言い聞かせていた様にも聞こえた。
しばらく迷ったリンクだが、一度は納めたその手をゼルダの頬に差し伸べて涙を拭いた。
「・・・姫様。あなた様が僕のために涙を流す必要などありませんよ。これは、この傷は姫様を悲しませてばかりいる僕への罰なんですから」
ダークリンクはリンクの抑圧された要求の具現。彼の心の闇そのもの。その弱い自分を切り伏せるためにも、リンクには多少の犠牲は必要だった。
「最初会ったときから、僕には不釣り合いだってわかってました。だけど、諦めきれなかった。その未練と心の弱さがあいつに、ダークになったんです」
建前に封印した自分の欲望は抑えきれずにダークの形で噴出した。
決まり・運命に流された臆病さがダークを抑え切れなかったのだ。
「だから、姫様が嘆かれる必要はありません」
きっぱりと言い切ったリンクの声音には迷いはなかった。
愛した人だから守りたかった、大事な人だから泣かせたくなかった、その心に偽りはない。
例え許されない思いだとしても、その思いを封印することをやめた。
ゼルダは涙を拭うと、居住まいを正してリンクに改まって声を掛ける。
「では、リンク。ひとつだけ、私の我が儘を聞いてもらってもよろしいですか?」
「何なりと」
リンクは素直に請け負う。
ゼルダの頬が微かに赤みを帯びて、ためらうように口元を手で覆う。
やがて覚悟を決めたのか、たどたどしいながらも言葉を紡いだ。

「せめて、この世界にいる間は、ハイラルの法律に縛られていないここでだけは・・・。王女としてではなく、『ゼルダ』として、あなたを、愛しても、良いですか・・・?」


うつむいたままのゼルダの手をリンクが掴んで引き寄せた。
咄嗟のことに驚いたゼルダが顔を上げる。
その一瞬の間を置かずに、ゼルダの唇はリンクによって塞がれていた。
まるでつむじ風のような唐突な口づけ。
女の子が望んだり夢見たりするようなロマンティックなキスシーンではない、朴訥すぎるほど素朴でストレートな愛情表現だった。
それは、紛れもないゼルダの我が儘に対する承諾の証。
昔日の溝を塞ぐように、重なり合わせた手と唇はしっかりとお互いを離さなかった。

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