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題名は今日のタイトルの英語版です。
そのまんまの意味、亜空の一件(闘技場の騒ぎ)から3日目の想像話です。
ゲームだったら一日で済んでしまうけど、たぶん実際には何日も経ってると思います。
遺跡ステージの前くらいだと思っていただければしっくり来ると思います。
初日の今日はマリオチームサイドから。二日に分けてお送りします。
月葉のキャラクター設定から成り立っていますが、それでも読んでやろうと言うお心の広い方のみどうぞ・・・。
『It depends about the third day from the start. 』
夕日が暮れて空が群青色に変わる頃、最後まで去っていったハルバードとデデデの行方を探していたピットはやむなく翼を収めてみんなの待つ遺跡の広場に戻った。
遺跡の広場の中心では焚き火が煌々と燃え、みんなはその灯りを囲むように座ってピットを待っていた。
「お帰り、ピット」
「魚が焼けてる。カービィやヨッシーにとられないようにキープしておいたから食べなよ」
リンクが差し出してくれた魚を前にピットの腹が切なげに鳴った。
それを聞いたみんなから一斉に賑やかな談笑が溢れる。
もし、これが普通のキャンプならどんなに楽しい光景だったろうか。
亜空軍の強襲によって世界は亜空へと引きずられ、他のファイター達も散り散りになってしまった今、亜空軍の抵抗勢力としてマリオを中心にピットとカービィ、そして途中から加わったリンクとヨッシーは亜空軍の母艦となっている戦艦ハルバード、捕らえられたファイター達を連れ去ったデデデを追っていた。
途中でバイクを乗り捨てていったデデデは行方が早い段階でわからなくなった。
残るはハルバードだが夜も更け、昼夜の区別のない亜空軍を相手にするのは不利と判断し、今夜は遺跡近くの石段広場で野営をすることになった。
「ごめんなさい。ハルバード、見失っちゃいました」
「無理もない。こんなに暗くてはね、それに亜空に入ってしまっていては追いかけることもできないよ」
「ヘタに単独行動をして敵に狙われるよりも、安全を確保しないと」
マリオとリンクは優しく笑ってピットをねぎらってくれる。
でも、本当は二人とも大切な人を亜空軍に捕らわれている事を知っているピットは内心どれだけ辛いかと思うと素直に二人の言葉に甘える気になれなかった。
過去の話とはいえ、自分も大切な人と離れてしまう辛さは身にしみて覚えている。
(僕だってパルテナ様が囚われた時、すごく辛かったのに・・・)
その辛さを微塵も見せない強さは今のピットにもできるかは甚だ疑問だった。
いつものように変わりなく、ヨッシーを撫でているマリオや保存食料に手を出しかけたカービィを食い止めているリンクを見ていたピットは天空で見ていた彼らの勇姿に心を躍らせていた自分を思い出した。
(やっぱり、みんな強いなぁ・・・)
食事を済ませて火の勢いも収まった頃、一同は眠りに付くことになった。
お腹も一杯になって今日も元気に走り回っていたカービィとヨッシーはもう健やかな寝息をたてている。
ピットも瞼が重くなってきていたが、視界の端に緑の衣が見えて顔を上げた。
「リンク?寝ないの?」
「・・ん?ああ、俺は起きて見張りしておく。敵が来たらすぐ教えるから休んでおけ」
「えっ?でも・・・」
リンクだって疲れてるはずなのに・・・。
そう言いかけたピットを遮るようにリンクはピットの頭を撫でた。
「心配ない。ハイラルで夜でも行動していたことだって何度もあったし慣れてる。いざとなったらマリオに代わってもらうし、それにピットやヨッシーやカービィは俺たちよりも行動力があるんだから今のうちにしっかり休んで明日頑張ってくれないと」
「・・・うん。ありがとう、リンクおやすみ。マリオさん起きなかったら僕でも良いからね」
「ああ、おやすみ」
石段の陰で横になって休んでいたピットは夜半、微かな草の鳴る音で目を覚ました。
(亜空軍か・・・?)
傍らに置いた神弓を手元に引き寄せて油断なく周囲を見渡す。
殺気は感じられない。起き上がって様子を確かめてみるが、誰もいないようだ。
安全を確認できるとピットは肩の力を落とした。
安心してもう一度毛布にくるまろうと横になりかけたが、その時わずかな異変に気付いた。
(・・・マリオ、さん?)
ピットと向かい側の石段で休んでいたはずのマリオの姿が見えない。
見張りをしているのかと思ったが、自分たちの反対側で見張りをしていたのはリンクだった。
一体どこに・・・、改めて周囲を見渡すと森の方から火の明かりが見えた。
亜空軍の一味か、ピットは神弓を取ると火の明かりが見えた方向へと走り出した。
行き着いた先は小さな池だった。
さっき見えた明かりはもう見えない。
「あれ・・・?見失ったのかな・・・?でも、マリオさんはどこに・・・」
辺りを見渡しているピットは背後から忍び寄ってくる影に気がつかなかった。
忍び寄った影はその手をピットの肩に載せた。
「おや、ピット・・・」
「うわああああああああああ!!!でたああああああああああ!!!!」
いきなり肩を触られたピットはパニックになって神弓を振り回す。
すると影から出てきた人物の方が慌てた声をあげた。
「ピット、ごめんごめん。私だよ、マリオだ。脅かしてごめん」
「・・・え?マリオさん?」
聞き覚えのある声に我に返ったピットはその人影をまじまじと見返す。
すると人影の指先から赤い炎が迸って周囲を照らし出す。
そこには見慣れたマリオの顔があった。
「いやはや、脅かして済まないね。喉が渇いたから水飲みに来てたんだが、足音がしたもので敵かと思ってしまって・・・」
「もう、脅かさないでくださいよ~。僕、お化けとか苦手なんですから~」
「ははは、ごめんごめん」
罰が悪そうに笑いながらマリオは尻餅をついたピットに手を差し伸べた。
とりあえず仲間の安否も確認できたピットはようやく表情を緩めた。
「しかし、天使の君がお化け嫌いとはね・・・」
「よくわからないものは駄目なんです。やっぱり怖いし」
「・・・怖い、か」
ピットのセリフをマリオは復唱しながらうつむいた。
まるで何かを思い出しているように見える。
ピットもマリオの変化に気がついた。
「マリオさん・・・?」
「ああ、いや、君が怖いと言ったとき、あの人を思い出してね・・・」
ピットはマリオが言った『あの人』がわかるような気がした。
マリオはそのまま続けた。
「私は長いこと配管工をしていたし、いろんな冒険もしていたから怖いなんてことは少しも考えたことがなかったんだよ。弟のルイージがなぜそれ程お化けだの色々怖がるのか不思議に思っていた位でね。でも、あの人が怖いと震えて泣いている姿を見ると『怖い』という気持ちが少しわかったような気がしたんだ。そして、守ってあげたいと思ったんだよ」
マリオは一度言葉を切ると池に視線を向ける。
水面には月がさざめいて揺れていた。
「だけど・・・、私はいつも守れなかった。私に出来たのは、恐怖を味わった後で助け出すことだけだった」
「・・・マリオさん」
闘技場での一件はピットも水鏡で見ていた。
いかに百戦錬磨のマリオといえど強襲を食らってはひとたまりもなかった。
カービィが無事にあの闘技場から脱出できたことさえ奇跡に近い幸運だったとさえ言える。
「カービィがゼルダ姫を助け出せたと聞いたとき、私は情けなかった。あの時私もあの場にいればピーチ姫を助け出せたかも知れないのに、ワリオの手にかけさせることなどしなかったのに、なのに、なのに私はピットが助けてくれなければ何も出来なかったんだ」
マリオの手が震えている。
耐え難いほどの我が身のふがいなさに必死でこみ上げてくる思いを耐えているに違いなかった。
「・・・これでは、ピーチ姫に失望されても当たり前だ。いつ、もっと強そうな剣士や勇者がピーチ姫のお心を捉えてもおかしくはない。」
「僕は、・・・違うと思いますよ」
ピットの言葉に初めてマリオが振り返った。
「僕、天空からずっと水鏡で地上の様子見てたんですけど、ピーチ姫ってすごくしたたかな人だなって思ってたんです。だってあんなに何回も誘拐されてひどい目にあってるのに絶対マリオさんやみんなと一緒にいたがるんですよ。懲りない人だなぁって思ってたけど、それってやっぱり何回も誘拐されてもきっとマリオさんが助けてくれるって信じてるから安心して側にいられるんじゃないかなって思うんです。・・・パルテナ様も、前に幽閉されたとき、とても恐ろしかったでしょうに僕が助けに行ったとき笑ってくださったんです。僕が・・・、『ピットが来てくれるって信じていたから少しも怖くはありませんでしたよ』って」
その時の事を思い出したのか、ピットの頬が微かに赤くなって緩んでいる。
ピットの幸せそうな表情を見たとき、マリオの脳裏に今までピーチ姫を助け出したときの光景がいくつも巡って浮かび上がった。
それまで青白かった顔がほのかに桃のようなピンクに染まって、ほころんだ桃のように花開いたような笑顔しか浮かばない。
だが、本当に嬉しそうな笑顔だった。
「だから、きっと今回も待っていてくれてますよ。また会えるって信じて待っててくれてます。だって、マリオさんはいつもピーチ姫を助け出してたヒーローじゃないですか」
「!!」
ピットの言葉に我に返ったマリオは今までの冒険を思い出した。
あんな困難な冒険も危険な行動も、全ては大切なピーチ姫のためだった。
彼女のあの笑顔を見たいために今まで頑張ってきたのだ。
(・・・何を考えていたんだろう、私は。今更、昔からの性格も考えも変えられるはずないのに)
「・・・ピット」
「はい?」
マリオはピットに手を差し伸べるとゆっくりと微笑んだ。
「今更な話だけど、私は君と会えて一緒に戦えて本当に光栄だと思うよ」
ピットの頬が一気に赤みを帯びたものに変わった。
そして嬉しそうにピットも微笑み返すとマリオの手を握り返す。
「僕も、マリオさんと冒険できて、そう言っていただけてとても嬉しいです」
「これからも、よろしく。明日も一緒に頑張っていこう」
「はいっ!!」
二人の誓いは中天に揺れる月だけが見ていた。